認知行動療法

不安と認知の関係を理解しよう

不安が強まったとき、あなたはどういう考えをしてどういう行動をしているでしょうか?
それを整理して考えることは日常にめったにはありません。
不安感情が強いとき、思考は決めつけの思考や悲観的な推論になっていることが少なくありません。
たとえば「私には無理、できない」「いま、こういうことが起きているのだからこういう結果になる」と決めつけがちになるということです。例えば、

上司が後輩社員を褒めて期待している。もう自分は今後、上司から当てにされない・・・
いつもの膝の痛みが今日は強い。もう痛みは一生治らないだろう・・・

不安や心配が強いとき、考え方によって気分がますます不安になり、別の不安までが頭の中に浮かんでいきます。
また、動悸がしたり、寝付けなくなったり、身体にも反応が起こってきます。
不安には、現実的な不安、道徳的な不安などがあります。
◎想像上の危険が起こりそうな不安
◎害を被るのではないか
◎大事なものや関係、人、機会、信頼を失うのではないかという不安
◎個人的、職業的、社会的機能を損なうのではないか
◎健康を損なうのではないか
◎軽蔑される、差別される、無視される、恥をかく、攻撃されるのではないか
◎身体的症状が持続し、機能不全であり、無力であるという不安
◎自分の長期間確信を持っている信念やあり方(=スキーマ)を、自分が破ってしまったという不安、罪悪感

現実的な不安は、身の危険を感じたときの不安で、道徳的な不安や罪悪感は、個人的な規則や社会的規則を破った結果に生じます。
神経症的な不安は、過去のあの危険がまた起こるのではないかという「予期不安」も含まれます

認知行動療法で考え方と可能性を広げよう

●不安の認知モデル 思考・感情・行動を理解する

まず、不安の基本的な認知モデルを紹介します
こころが動かされる落ち着いていられない不安な状況が発生した
その状況に関して知覚する
その状況は「基本的スキーマ」=信念と仮説に基づいて知覚される
知覚された脅威や自己の有効性についての評価をしなければならない
脅威的と評価されれば、それは危険とみなされる
それが脅威ではなく対処できるとみなされれば、平静でいられる
対処できたら、自己の有効性を高めることになる

●自動思考と感情を書き出して自分の状態を観察する

次に日常の生活の中の状況をシーンとして取り上げ、カウンセリングのなかや日常で書き記していきます。
自分の感情と認知(捉え方)は、どういった傾向を持っているでしょうか?モニタリングします。
△状況を取り上げる
例:仕事の大きな会議で、初めて議長を任された
例:仕事が納期に間に合いそうにないと分かった
例:初めて、彼・彼女の両親と面会することになった
例:自動車教習中にカーブを曲がり切れず、教官にきつく指導された
例:マラソン大会に出場、走行中に熱中症でうずくまった

上記のような不安が高まったときの自分の自動思考を観察します。
自動思考とは、状況が起こったと同時に浮かんだ思考のことです。
あなたは上記の状況に置かれたとき、どのように感じ、考えるでしょうか?

△感情の高まり、強さを確かめる
感情は、不安だけでしょうか?他の感情は感じましたか?
それはどのくらい強い感情でしょうか?(数値化)

△自動思考を書いてみる
同時に浮かんだ考えは、多いでしょうか?
どういうことを想定したり、推測したりしますか?

ひとつ、取り上げてみましょう

 

①~⑥のどれを思考していることが多いでしょうか?

 

これらの思考は多くはスキーマ(自分の信念やあり様)により創出されています。
このスキーマは子供の頃に作られているものもあります。
自動思考の傾向とは、考え方のくせ、よく考えがちであることです。
例えば、不安が強く感じられるとき、「破局視」の思考傾向がある人は、予期しない局面で過去に同じような局面にあったときのことが想起され、この悪いことが最悪な結果になる、今後のことまでもが、最も悪い結果になると考えます。
カウンセリングでは、破局的な見方や考え方を減少させ、破局以外の可能性を考えます。

不安を感じている時の認知の傾向として、以下のようなものが挙げられます

①分極化(二者択一思考)
②自責化
③過度の一般化
④選択的抽出(否定焦点づけ)
⑤自己卑下
⑥結論の飛躍(恣意的推論)
⑦破局視
⑧感情的決めつけ
⑨すべき思考
⑩個人的な思考傾向

などがあります。上記の傾向は、鬱にもなりやすい思考の傾向と言われます。

●機能的な認知を考えながら行動を試す

認知行動療法カウンセリングでは、考え方の幅を広げ、視点を加えて、思考することのイメージの置き換えに取り組んでいきます。また、行動を取り上げ、行動した結果について考えを整理します。

根拠はあるのかどうか、確かめる
反証として様々な視点でとらえてみる
自身の思考の傾向をとらえ、他の選択を見つけて思考を試みる
援助を得られる先や他者を同定し、それを活用する
柔軟な考え、機能する考え、合理的な考えを新しい視点で考えてみる
過去の経験と照らして、将来の推測を考える
感情の変容を確認する
他の考えや確信を生み出すように働きかける
できることから少しずつ行動をとり挙げて、事前にリハーサルする
自己主張、自己表現のトレーニングを行う

△感情の高まり、強さはどう変化したか確かめる
感情の強さはどのくらいでしょうか?
試してみたいことが他にないでしょうか?

認知行動療法は、自分が持っている思考傾向やスキーマを明確にして、それに取りむことで心の力を回復したり、また鬱や困ったことへの問題を解決へ導き、自分の考えや主張を、周りの人へきちんと伝えることを目指します。
人間関係のストレスを減らし、自分の考えを明確にし、確信を高めていくことによって、自分を強く責めたり、必要以上に不安を高めることが少なくなっていきます。